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一液性エポキシとは何か?

一液性エポキシ(One-component Epoxy)は、エポキシ系接着剤(Epoxy Adhesive)の一種であり、主剤にあらかじめ硬化剤が混合された状態で供給される単一成分型の樹脂です。英語では「One-component Epoxy Resin」と表記されることが多く、特に自動化が進む精密製造分野や電子機器組立て現場で広く使用されています。

従来の二液性エポキシ(2液混合型)では、使用直前に主剤と硬化剤を所定比率で混合し、撹拌・脱泡などの準備作業が必要ですが、一液性では混合工程が不要で、そのまま装置に充填して使用可能です。この「混合不要(ノーミキシング)」という特長が、作業効率の大幅な向上と品質の安定化に寄与しています。

特徴とメカニズム

一液性エポキシは、常温では反応せず保存が可能で、一定の温度条件(一般的に100℃〜150℃程度)に加熱することで硬化が始まります。これを「熱硬化型」と呼び、加熱炉やホットプレート、IRヒーターなどと組み合わせることで、工程内で安定した硬化反応制御が可能になります。
一部の製品は冷蔵保管が必要ですが、取り扱いが非常に簡単で、ディスペンサー(定量吐出装置)との親和性が高く、点塗布・線塗布・封止・ポッティングなどに適しています。

硬化のプロセスと特性

一液性エポキシ樹脂は、加熱されると内部にあらかじめ配合された硬化剤との化学反応が進行し、徐々に粘度が上昇しながら三次元の網目構造(架橋構造)を形成します。この架橋反応により、優れた機械的強度、耐熱性、接着性、耐薬品性が発現します。また、加熱条件(温度と時間)を適切に制御することで、硬化速度や物性(硬さ、柔軟性、収縮率など)を調整することも可能です。これにより、製品仕様や用途に応じた最適なプロセス設計が行えます。

一液性であるため混合ミスや計量のばらつきがなく、安定した品質管理がしやすい点も、電子部品製造などの高信頼性が求められる分野で広く採用されている理由のひとつです。

なぜ「一液性」なのか?

近年の製造ラインでは、生産タクトの短縮と品質の安定化が同時に求められる中で、材料選定にも大きな転換が起きています。中でも一液性エポキシ樹脂は、混合や脱泡などの前処理を必要とせず、「そのまま使える」材料として多くの自動化工程に適合しています。特に、Epoxy Resin の中でも自動化と信頼性が重視される用途では、一液性は他の材料(UV硬化型やアクリル系など)よりも「高強度 × 精密 × 熱耐性」のバランスが優れています。

  一液性エポキシ樹脂の特長
工程短縮 混合・撹拌・脱泡が不要で、塗布後すぐに硬化プロセスへ移行可能
安定性 プレミックス済みで組成が安定しており、混合比ズレや硬化不良のリスクが低減
作業性 カートリッジやシリンジ等に充填済みで、装置にそのまま装着して使用可能
保存性 冷蔵または常温での長期保存が可能なグレードがあり、在庫管理がしやすい
品質再現性 吐出量・粘度・硬化性のばらつきが少なく、量産工程での歩留まり向上に貢献
材料特性バランス 高強度・高耐熱性・電気絶縁性など、用途に応じた機能性設計が可能

一液性エポキシの塗布における3つの課題

精密なディスペンス工程において、一液性エポキシ(One-component Epoxy)は取り扱いが容易である一方、塗布時の挙動特性に起因する制御の難しさが課題として現場で顕在化します。

課題1|粘度変動による塗布不安定性

一液性エポキシは、時間の経過や周囲温度の変化により粘度(Viscosity)が大きく変動する性質があります。この粘度の変化は、吐出量の不安定化や塗布パターンの乱れにつながり、以下のようなトラブルを引き起こします:
・過剰吐出により液だれ(Dripping)が発生
・吐出終了時に糸が切れず糸引き(Stringing)が発生
・粘度低下による流れすぎ、あるいは高粘度化による吐出不足
これらは特に点塗布・線塗布といった精密パターン形成を要する工程では、歩留まり低下の直接的要因になります。わずかな粘度変動でも大きな品質差が生まれるため、温度管理と粘度安定化対策が重要です。

課題2|塗布の均一性が確保しにくい

一液性エポキシは液状であるため、基材表面の形状や表面張力の影響を受けやすく、特に以下のような場面で膜厚のばらつきが発生します:
・複雑形状のリセス部(溝や穴)に対し、流入量が過剰または不足
・粘度が変動することで、広がり方や塗布幅が変化
これにより、「厚すぎる部分」「薄すぎて不足する部分」が同時に発生し、製品の接着強度や封止性能にばらつきが生じます。特に近年の製品は微細化・高密度化が進んでおり、0.1mm以下の膜厚制御やエッジ形状の精密塗布が要求されるケースも増えています。

課題3|微小塗布時の量制御が困難

一液性エポキシを極小領域にピンポイントで塗布する用途(例:ICピン周辺、センサーチップなど)では、微小量(ナノリットルレベル)での高精度な吐出制御が求められます。容積式ディスペンサーや非接触ジェットディスペンサー、超微小ニードルバルブなど、用途に応じた機構の選定が不可欠です。特に点塗布や断続的パターン形成では、サックバック機構による液切れ性能や、再現性の高い1ショット吐出性能が求められます。

一液性エポキシ樹脂はその高い汎用性と取り扱いの簡便さから、さまざまな製造工程で採用されていますが、同時に塗布時には精密な制御が求められます。

一液性エポキシの塗布課題を解決する高精度ディスペンス技術

一液性エポキシ樹脂の塗布工程においては、材料粘度の変動、膜厚ばらつき、微小量制御の難しさ、さらには塗布後の硬化条件との整合性など、製品品質や生産性に大きく影響する多くの課題が存在します。特に、ミスショットや液だれ、過剰塗布といった問題は、部品の不良率上昇や工程ロスにつながるため、現場では早急な改善が求められています。

こうした課題に対応するためには、塗布対象の構造・形状・材質を十分に理解したうえで、吐出量・塗布精度・動作速  度・タクトなど複数のパラメータを最適化する必要があります。 用途や材料特性に応じたディスペンス装置の選定は、歩留まりの向上、生産ラインの安定運用、さらにはトータルコストの削減に直結する重要な要素です。

サンエイテックでは、ナノリットルレベルの超微小塗布から、高粘度材料の定量・安定吐出、さらには非接触での高速・高精度塗布まで対応可能な幅広いディスペンサーソリューションをラインアップしています。 また、単体バルブのご提供だけでなく、搬送装置・周辺機器・コントローラを含めたシステム構築や、塗布検証のサポートまで、お客様のニーズに応じてトータルにご提案可能です。

粘度変動に強く、定量制御に優れる

容積送式ディスペンサー ー ecoPEN XSシリーズ

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