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ディスペンサー技術ガイド
前回では、液剤ディスペンスにおいて温度管理(温調)が重要である理由を、「温度→粘度→吐出量」の因果関係から整理しました。吐出条件が同じでも材料温度が変化すれば粘度が変動し、線幅やドット径のばらつき、にじみ・途切れといった塗布不良につながります。安定吐出を実現する上で、温調は装置条件と塗布結果の再現性を成立させる「前提条件」といえます。
一方で温調を導入する際に課題となるのが、「どの方式を選ぶべきか」という点です。 ディスペンス工程で採用される温調方式は大きく分けて、
の2つに分類できます。
ヒーター式は材料を一定温度まで安定して昇温させる用途に適しており、構成がシンプルで導入しやすい方式です。
一方ペルチェ式は、周囲環境の変動が大きい工程や、冷却を含めた高精度な温度安定化が求められる場合に有効です。本記事では、この2方式を中心に、仕組み・特徴・適用範囲と選定ポイントをわかりやすく解説します。
ディスペンス工程における温調方式として、最も広く採用されているのがヒーター式温調(加熱制御)です。これは材料を一定温度まで加熱し、粘度を安定させることで吐出量や塗布形状のばらつきを抑える方式です。 ヒーター式温調は構成が比較的シンプルで、導入しやすいことが大きな特長です。
ディスペンサ周辺では主に、
といった形で使用され、シリンジや材料タンク、ノズル周辺を効率よく昇温させることができます。
特に、接着剤や樹脂材料など「温めることで粘度が下がり、流動性が安定する液剤」において効果的です。例えば冬場や低温環境では材料粘度が上昇しやすく、吐出圧力の変動や線幅の乱れが発生しますが、ヒーターによる温調を加えることで材料状態を一定に保つことができます。またヒーター式温調では、単に加熱するだけでなく、設定温度に対して安定した制御を行う温度コントローラーが重要になります。
温度制御が不安定だと、
といった問題につながるためです。
このようなヒーター温調用途に適した製品が、サンエイテックの温度コントローラー STC-200です。 STC-200は、ディスペンサ温調器の温度調節を正確に行うことができるコンパクトな温度コントローラーであり、使用するセンサに合わせて入力種類を選択できる柔軟性を備えています。
さらにセルフチューニング機能により、自動的に制御パラメータを最適化し、温度ブレを抑制します。昇温時のオーバーシュート抑制機能によって安定した温度制御を実現し、設定温度から外れた場合にはアラーム機能で異常を検知することも可能です。
システム構成図
ヒーター式温調は「加熱して粘度を安定させたい」という多くのディスペンス工程において、最初の選択肢となる方式です。STC-200を組み合わせることで、シンプルな構成で再現性の高い温調管理を導入することができます。
周囲温度の変動が大きい工程や、冷却を含めた高精度制御が必要な場合には、ヒーター式だけでは対応が難しいケースもあります。より高精度な温度管理が求められる工程で採用されるのがペルチェ式温調(加熱+冷却制御)です。
ペルチェ方式の最大の特長は、単に昇温するだけでなく、必要に応じて冷却側にも制御できる点にあります。
周囲温度の変化や装置内部の発熱によって液剤温度が上振れする場合でも、冷却補正を行うことで設定温度に安定して追従させることが可能です。
ディスペンス工程では温度変動がそのまま粘度変動につながるため、
といった課題が発生しやすくなります。
このような場合、ペルチェ式温調によって液剤温度を一定に保持することで、粘度を安定化させ、より再現性の高い塗布品質を実現できます。特にシリンジ吐出では、液剤が直接シリンジ内部に保持されているため、材料温度を高精度に管理することが重要です。そのためペルチェ式は「高精度なシリンジ温調用途」に非常に適した方式といえます。
サンエイテックのペルチェ式シリンジ温調システムは、シリンジ内液剤を正確に温調制御し、液剤温度を一定に管理するための専用システムです。短時間で設定温度まで到達し、その後も一定温度を保持することで、液剤粘度を安定させた塗布作業を可能にします。さらに温度精度は±0.1℃レベルの高精度制御に対応しており、微細塗布や品質要求の厳しい工程にも適用できます。
シリンジシステム用温調ブロック(10ccと30cc)
また特長として、
といった量産設備での運用を意識した設計となっており、安定稼働と保守負担低減の両立が可能です。
SETシリンジシステムと組み合わせることで、より高精度で安定した吐出制御を実現できる点も大きなメリットです。ペルチェ式温調は、環境変動の影響を受けやすい材料や、吐出精度を極限まで安定させたい工程において、最適な温調ソリューションとなります。
SETシリンジシステム
このように、ヒーター式はシンプルな加熱温調に適し、ペルチェ式は加熱+冷却による高精度制御に強みがあります。液剤特性と工程要求に応じて最適な方式を選定することが、安定吐出への近道となります。
ディスペンヒーター式温調とペルチェ式温調はどちらもディスペンス工程における粘度安定化に有効ですが、求められる制御精度や環境条件によって最適な方式は異なります。ディスペンス品質に影響する要素を 「加熱能力」「冷却能力」「応答性」「温度安定性」「メンテ性」「コスト」 の6項目で比較すると、違いがより明確になります。
| 液剤粘度 | ヒーター式 | ペルチェ式 |
|---|---|---|
| 加熱能力 | ◎ 強い |
〇 十分 |
| 冷却能力 | × 不可 |
◎ 冷却が可能 |
| 応答性 | △ 遅め |
◎ 高速応答 |
| 温度安定性 | 〇 最大±0.1℃の安定制御 |
◎ ±0.1℃の安定制御 |
| 温度設定範囲 | 室温-80℃ | 20℃-60℃ |
| メンテナンス性 | 〇 シンプル |
◎ ほぼメンテ不要 |
| 初期コスト | 安価 | やや高い |
| 精密塗布適性 | 要相談 | 最適 |
ディスペンス工程における液剤温度管理(温調)は、粘度を一定に保ち、吐出安定化や精密塗布品質の向上を実現するための重要な要素です。ヒーター式温調とペルチェ式温調を適切に使い分けることで、接着剤・樹脂ディスペンスの再現性を大きく高めることが可能です。
ヒーター式は構成がシンプルで導入しやすく、加熱によって粘度を安定させたい工程に適しています。そのため、接着剤や樹脂材料の温調管理には STC-200 温度コントローラー が最適です。一方で、外気変動の影響を受けやすい工程や、±0.1℃レベルの高精度制御が求められる場合には、加熱と冷却を両立できる ペルチェ式シリンジ温調システム が有効です。
温調方式の選定やシリンジ温調システム導入に関するご相談がございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。