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ディスペンサー技術ガイド
電子機器の高信頼化が進む中、コンフォーマルコーティング(防湿コーティング剤)は、基板保護において不可欠な存在となっています。
一方で近年、この防湿コーティング剤を取り巻く環境は大きく変化しています。従来は主にVOC(揮発性有機化合物)規制への対応が中心でしたが、現在ではそれに加え、化学物質規制や環境対応要求の高度化により、材料設計の方向性が変化しつつあります。
こうした変化は、単なる材料特性の違いにとどまらず、塗布プロセスにも新たな最適化を求める段階に入っています。本篇では、規制の背景から材料変化、塗布方式への影響についてご説明します。
コンフォーマルコーティングとは、電子基板や電子部品を湿気、塩害、ほこり、腐食などの外部環境から保護するために形成される薄い保護膜、またはそのコーティング技術を指します。日本では「防湿コーティング」と呼ばれることもありますが、電子機器業界では「コンフォーマルコーティング」という名称も広く使用されています。
使用されるコンフォーマルコーティング剤には、アクリル系、ウレタン系、シリコーン系、エポキシ系などがあり、使用環境や要求される耐湿性、耐熱性、絶縁性、作業性などに応じて選定されます。環境規制や電子機器の高信頼化要求への対応に伴い、コンフォーマルコーティング剤の材料設計だけでなく、その塗布方法や硬化プロセスにも見直しが求められています。
日本国内においては大気汚染防止法に基づくVOC削減の流れが継続しており、溶剤型材料から低VOC・無溶剤材料への転換が進んできました。
さらに近年では、REACH規制やRoHS指令への対応に加え、PFAS(フッ素系物質)や特定界面活性剤の使用制限など、より広範な化学物質管理が求められるようになっています。自動車・電子機器メーカーを中心に独自のグリーン調達基準を設ける動きも加速しています。
こうした複合的な要求により、防湿コーティング剤は以下のような方向で変化が進みつつあります。
これらは環境対応および高機能化の進展を示すものであり、同時に塗布プロセスにおいても新たな対応が求められる要因となっています。
材料設計の変化は、塗布時の挙動に直接影響します。特に現場で顕在化しやすいのは、「流れ方」と「広がり方」の変化です。
低VOC化や無溶剤化に伴い、材料の粘度やレオロジー特性は従来とは異なる傾向を示す場合があります。その結果、その結果、従来の吐出条件では、材料特性に応じた調整が必要となるケースも見られます。
また、界面活性剤の組成変化により、表面張力や濡れ性が変化することがあり、従来と同様のレベリング挙動を得るためには条件調整が重要となります。さらに、硬化機構の変化により、塗布後の流動や硬化プロファイルも変化するため、パターン設計や膜厚制御においても最適化が必要となります。
このように、材料の進化は単なる「扱いにくさ」ではなく、塗布プロセス全体における最適条件の見直しを促す要因となっています。
このように、材料の変化は「単なる扱いにくさ」ではなく、プロセス全体の再設計を必要とする要因となっています。
こうした変化の中で、従来主流であったフィルムコート方式についても、その適用領域の再整理が進んでいます。
フィルムコート方式は、広範囲を均一に覆う能力に優れ、生産性の面でも大きなメリットを持つ塗布方法です。特に低粘度材料を用いた全面コーティングにおいては、現在でも非常に有効な手法であり、その基本的な価値は変わっていません。
一方で、近年の材料特性との組み合わせにおいては、条件設定の重要性がこれまで以上に高まっています。 例えば、材料粘度が高い場合には霧化条件の最適化が重要となり、また濡れ性の特性によっては、コーティング後のレベリング挙動に配慮したプロセス設計が求められます。
例えば、材料粘度の上昇により、安定した霧化条件の確保が難しくなる場合があり、塗布の均一性ができなくなる可能性があります。また、濡れ性が低下した材料では、スプレー後に液が均一に広がらず、結果としてコーティング品質にばらつきが生じるケースも見られます。さらに、オーバースプレーによる材料ロスや、不要部位を保護するためのマスキング工数も、改めて見直される対象となっています。
重要なのは、フィルムコート方式が適さなくなるということではなく、適用条件や得意領域がより明確になってきているという点です。フィルムコート方式は「使えなくなる」のではなく、適した用途がより明確に限定されていく方向にあると言えます。
こうした背景から、必要な箇所のみに塗布する選択塗布(Selective coating)や、高粘度材料への対応、高信頼用途の対応方法が進んでいます。
スプレー・ニードル・ジェット方式では、吐出量や塗布位置を精密に制御できるため、材料特性に応じた最適な塗布が可能となります。また、マスキング工程の削減や材料ロス低減といった工程全体の効率化にも寄与します。
各方式にはそれぞれ適した用途があり、材料特性や塗布要求に応じて選択されます。
スプレー方式は広範囲の均一塗布に優れ、ニードル方式やジェット方式は用途に応じて精密塗布に適用されるケースがあります。
| 項目 | スプレー方式 | ニードル方式 | ジェット方式 |
|---|---|---|---|
| 接触有無 | 非接触 | 接触/近接 | 非接触 |
| 塗布精度 | 〇 | ◎ | ◎ |
| 高粘度対応 | △ | ◎ | 〇 |
| 吐出安定性 | 〇 | ◎ | ◎ |
| タクト(生産性) | ◎ | 〇 | ◎ |
| 主な用途 | 広範囲のコーティング | 高粘度材料の精密塗布 | 狭小部・高精度塗布 |
これらの変化を踏まえると、コンフォーマルコーティング(防湿コーティング剤)における塗布方式は、今後「単一の方法に統一される」のではなく、用途・材料・要求品質に応じた最適選択へと進んでいくと考えられます。
広範囲の均一塗布にはフィルムコート方式、精密・選択塗布にはニードルやジェット方式といったように、それぞれの特性を活かした使い分けが主流となるでしょう。
防湿コーティング剤は、規制対応と高機能化の両立により着実に進化しています。そしてその進化に対応する形で、塗布プロセスもまた高度化しています。本質的には、「材料の進化に対してプロセスが最適化される」という関係にあり、いずれか一方の優劣で語るものではありません。
今後は、材料特性と塗布プロセスを一体で設計する視点が、より重要になっていくと考えられます。