技術解説コラム 技術解説コラム

技術解説コラム

お客様の精密塗布の基礎から応用までわかりやすくまとめ、現場改善に役立つヒントをご紹介します

ディスペンサー技術ガイド

製造現場における塗布工程では、「同じ量を、同じ位置へ、安定して吐出できるか」が製品品質を大きく左右します。外観上はわずかな違いに見えても、その差が接着強度や導通性、耐久性といった性能に影響を及ぼすため、塗布量の再現性は極めて重要な管理要素とされています。

このような背景のもとで重要となるのが「定量塗布」です。

定量塗布イメージ

定量塗布とは

定量塗布とは、設定した量の液剤を、繰り返し安定して吐出・塗布する技術です。接着、封止(ポッティング)、充填など、さまざまなディスペンス工程で用いられています。

製造現場では、単に液剤を「出す」だけではなく、必要な量を、必要な位置へ、安定した状態で繰り返し供給することが求められます。特に量産工程では、1回ごとのわずかな吐出量の差であっても、それが積み重なることで、接着強度、膜厚、充填量、外観、材料使用量などに影響する場合があります。吐出量を感覚的に管理するのではなく、一定の条件のもとで再現できる工程として管理することが重要になります。


定量塗布イメージ

また、「定量」という言葉から、一定量を吐出できれば十分だと思われることもありますが、実際の塗布品質は吐出量だけでは決まりません。

例えば、同じ量を吐出していても、塗布位置がずれたり、液剤の広がり方や塗布形状が変化したりすれば、接着不良や導通不良、はみ出しなどにつながる可能性があります。

定量塗布では、「量」だけでなく、「位置」や「再現性」まで含めて安定させることが重要です。つまり、定量塗布とは単に「毎回同じ量を出すこと」ではなく、塗布工程全体を安定させ、同じ塗布結果を繰り返し再現するための技術と考えることができます。

定量塗布を構成する3つの要素イメージ

定量塗布を構成する3つの要素

「定量」に求められる精度は用途によって異なる

なお、定量塗布に求められる精度や再現性は、すべての用途で一律ではありません。必要とされる吐出量の許容差や繰り返し精度は、液剤の特性、塗布量、製品仕様、工程の目的などによって異なります。

例えば、試作や条件検討を目的とした工程と、微小量塗布や高い品質管理が求められる量産工程では、必要とされる精度のレベルも異なります。

本記事では「定量」を特定の数値で定義するのではなく、それぞれの工程で求められる量や塗布結果を、必要な精度で安定して繰り返し再現できることとして捉えています。

定量塗布に使われる「定量ディスペンサー」とは

定量ディスペンサーとは、設定した量の液剤を安定して吐出するための装置です。接着剤、シール剤、グリース、熱伝導材料など、さまざまな液剤の定量塗布に使用されています。

定量ディスペンサーにはさまざまな吐出方式があり、液剤の粘度や流動特性、必要な吐出量、塗布形状などによって、適した方式が異なります。

線塗布イメージ

線塗布

ポッティングイメージ

ポッティング

安定した定量塗布を実現するには、ディスペンサーだけでなく、液剤の特性や供給条件、ノズル、塗布条件などを含めて、塗布工程全体を最適化することが重要です。

なぜ定量塗布が重要なのか

定量塗布が重要視されている背景には、製品の高精度化や品質管理の高度化、生産工程の自動化などがあります。

製品の小型化・高機能化

電子部品をはじめとする製品の小型化・高機能化が進むなか、わずかな塗布量のばらつきでも、製品性能や信頼性に影響するケースが増えています。特に微細な部品や限られたスペースへの塗布では、必要な量を安定して供給することが重要となり、より高い塗布精度が求められています。

品質管理要求の高度化

車載や半導体などの分野では、製品品質だけでなく、製造工程そのものを安定して管理することも重要になっています。そのため塗布工程においても、吐出量や塗布条件のばらつきを抑え、再現性のある工程として管理することが求められます。定量塗布は、単なる作業工程ではなく、製品品質を支える重要なプロセスの一つとなっています。

自動化・省人化への対応

製造現場では、自動化・省人化が進み、作業者の経験や感覚に依存した塗布から、設備によって安定した塗布を繰り返す工程へと移行しています。特に微小量塗布では、わずかな吐出条件の変化でも塗布結果に影響することがあります。人によるばらつきを抑え、設備によって安定した吐出を再現するという点でも、定量塗布の重要性が高まっています。

定量塗布が求められる主な用途

定量塗布は、半導体、車載・EV、電子部品、光学・ディスプレイ、医療・分析など、幅広い分野で活用されています。用途によって使用する液剤や塗布方法は異なりますが、共通して求められるのは、必要な量を安定して供給し、塗布結果のばらつきを抑えることです。

半導体パッケージ

半導体製造では、ダイアタッチ、アンダーフィル、ダム&フィルなど、さまざまな工程で定量塗布が使用されています。

ダイアタッチでは、接着剤の塗布量が接着層の厚みや広がり方に影響します。塗布量が不足すると接着不良やボイドの原因となる可能性があり、過剰な場合には周辺へのはみ出しにつながることがあります。

アンダーフィルでも、適切な量を安定して供給することが重要です。塗布量が適切でない場合、充填不足や周辺部へのはみ出しなどが発生し、製品品質に影響する可能性があります。

ダイアタッチイメージ

ダイアタッチ

アンダーフィルイメージ

アンダーフィル

熱伝導材料(TIM)

パワーモジュールやECU、EVインバータなどでは、放熱を目的として熱伝導材料(TIM)が使用されています。

TIMの塗布量は、圧着後の材料厚みや充填状態に影響するため、安定した定量塗布が重要です。塗布量が不足すると空隙が生じやすくなり、過剰な場合には材料のはみ出しや周辺部への流出につながることがあります。

EVバッテリー・車載部品

EVバッテリーパックでは、セルとハウジングの間にギャップフィラーなどの熱伝導材料を充填する工程があります。

比較的大容量の材料を扱う場合でも、必要以上に塗布すると材料コストの増加につながるため、高精度だけでなく、必要量を安定して供給することが重要になります。 また、インバータケースやECUハウジングなどのシール工程では、FIPGなどを一定のビード幅・高さで塗布することが求められます。


熱伝導材料イメージ

熱伝導材料

光学・ディスプレイ

LED、カメラモジュール、ディスプレイなどの光学分野では、わずかな塗布量の違いが製品特性や外観に影響する場合があります。

例えば、LEDの蛍光体を含む樹脂では、塗布量のばらつきが発光特性のばらつきにつながることがあります。
カメラモジュールのレンズ接着でも、接着剤の量や塗布位置を安定させることが、高精度な組み立てを支える重要な要素となります。


カメラモジュールのレンズ接着イメージ

カメラモジュールのレンズ接着

電子部品実装

電子部品の実装工程では、部品の仮固定用接着剤などに定量塗布が使用されています。
塗布量が不足すると十分な固定力が得られず、過剰な場合には周辺部へ広がることで、後工程に影響する可能性があります。


接着剤塗布イメージ

接着剤塗布

医療・分析

診断チップや分析デバイスなどでは、試薬や接着剤などの微量塗布に高い再現性が求められます。
特に試薬を扱う工程では、塗布量のばらつきが測定結果のばらつきにつながる可能性があるため、安定した定量吐出が重要です。

定量塗布ができないと起こる課題

定量塗布は、半導体、車載・EV、電子部品、光学・ディスプレイ、医療・分析など、幅広い分野で活用されています。用途によって使用する液剤や塗布方法は異なりますが、共通して求められるのは、必要な量を安定して供給し、塗布結果のばらつきを抑えることです。

定量塗布が安定しない場合、製品品質だけでなく、歩留まりや材料コスト、生産性にも影響する可能性があります。例えば、塗布量にばらつきがあると、接着強度や膜厚、充填状態などが安定せず、製品性能や信頼性の低下につながることがあります。

また、塗布量が過剰な場合には、材料使用量の増加や液剤のはみ出しによる外観不良が発生しやすくなります。一方、塗布量が不足すると、必要な接着強度や充填量などを確保できず、所定の性能を満たせない可能性があります。

さらに、吐出状態が安定しないと、条件調整や再塗布、検査・手直しなどが必要となり、生産効率の低下につながることもあります。特に量産工程では、1回ごとのわずかな吐出量の変動であっても、繰り返し発生することで歩留まりや品質の安定性に影響します。そのため、安定した定量塗布を継続して再現できる工程づくりが重要です。

製造現場では、例えば次のような課題が見られます。


  • ・同じ条件でも塗布結果にばらつきが出る
  • ・不良原因を特定しにくい
  • ・試作では問題なくても量産時に再現性が得られない
  • ・材料使用量や手直し工数が増える

本記事では、定量塗布の基本的な考え方と、製造現場で重要とされる理由について解説しました。
次回は、「定量塗布精度を左右する要因」について、液剤特性や吐出方式、供給条件などの観点から、安定した定量吐出を実現するためのポイントを詳しく解説します。