

ディスペンサー技術ガイド
この記事は、工業用ディスペンサーを使用している製造業や研究開発現場の技術者、品質管理担当者、設備導入を検討している方々に向けて執筆しています。
シリンジ・ピストンを用いた塗布で低粘度液剤の安定した吐出を実現するための秘訣をわかりやすく解説します。
これからディスペンサーの性能向上や生産性アップを目指す方に最適な情報を提供します。
シリンジとは、液剤を入れるための容器で、ピストンとは、液剤を正確に吐出するためにシリンジ内部に挿入される部品です。シリンジはバレルとも呼ばれ、ピストンはプランジャーと呼ばれることもあります。
ピストンはシリンジの中で液剤と空気の間に位置し、圧力を均一に伝えることで、液剤の安定した吐出を実現します。
また、液剤の無駄や液だれを防ぐ役割も担っており、精密な塗布作業や微量吐出が求められる現場では欠かせない存在です。
シリンジ・ピストンの材質や形状によって、対応できる液剤の種類が大きく変わるため、用途に応じた選定も重要です。
また、シリンジの内径にマッチしたピストンを選定することも非常に重要です。タイプの違うシリンジに無理に違うタイプのピストンを使用することは、シリンジ・ピストンが本来持っている吐出性能を十分に発揮できません。
高粘度の液剤を塗布する際のシリンジとピストンの役割には以下のようなものがあります。
液ダレは粘度が高い液剤の塗布で見られる“吐出後にノズル先から液が垂れる現象”です。
中~高粘度の液剤を吐出する際には液剤にかける圧力を高めに設定します。圧力がかけられることで、液剤が圧縮される方向にストレスがかかり、唯一の出口であるノズル先端から吐出されます。
吐出が終わり、吐出用の圧力が解放された後に僅かに圧縮されていた液剤は復元しようとします。その際にシリンジ内径に対してきつめ(大きめ)のピストンが挿入されていると、ピストンはびくとも動かず、液剤の圧縮開放圧力はノズル先端へと向かいます。その残圧によって吐出後にノズル先端から液剤が出てくる現象を「液ダレ」と言います。
この液ダレは、残圧が解放し切るまで続きます。液ダレを防ぐためには、シリンジに対して適度な密着でスムーズに動作するピストンが必要になります。スムーズに動作することで、圧縮された液剤の開放圧力を上方に逃がす役割(サックバック)をします。
中高粘度の液剤を圧力をかけて吐出
吐出後、圧縮された液が解放されるが、ピストンがきついためノズル先端から液だれをする
中高粘度の液剤を圧力をかけて吐出
吐出後、圧縮された液が解放されるが、ピストンスムーズに上昇し液剤圧力を上方に解放し、液だれが起こらない
また、液ダレにはシリンジの形状も非常に重要です。いくら最適なピストンを選定していてもシリンジの成形精度(工法)が悪く、シリンジの内壁にテーパーがかかっていると意味がありません。
シリンジ内壁のテーパーは、ピストンの位置によって密着度合いを変化させるため大きな不安定要素になります。
シリンジ上部でピストンが丁度良い密着状態でも、シリンジ下部にピストンが下がっていくとだんだんときつくなります。状況としてはきついピストンを選定しているのと同じになり、スムーズなサックバックを妨げ、結果として液ダレを引きおこします。
“液剤のムダ“は中~高粘度の場合に起こる現象です。
上記②で述べたようにシリンジ内径に対してきついピストンは残圧を解放できず、液ダレに繋がります。それを防ぐために緩めのピストンを選定するのですが、緩すぎるものを選定してしまうと液剤をカキトリしきれず、シリンジ内壁に液剤が残ってしまいます。
また、シリンジ内壁にテーパーがかかっている場合にも同様に液剤の内壁付着を引き起こします。シリンジ上部ではピストンが緩い状況が生じ、シリンジ内壁に液剤が残ってしまう現象が発生するためです。
壁面に残った残液は全て「液剤ロス=コスト」になります。それだけで無く、壁面に残った液剤は視認性を下げ、シリンジ内の残量を目視で確認することの妨げにもなります。
ここでの解決方法も、内径がストレートに作られた精度の良いシリンジを選定することと、シリンジに対して適度な密着でスムーズに動作するピストンを同時に選定することです。残圧をサックバックによって解放しながらも、壁面にはピタッと密着して液剤を全てカキ取る・・・そ
んな夢のようなシリンジ・ピストンの組合せが必要になります。
サンエイテックではそのような組み
合わせのシリンジとピストンをご用意しています。こちらは別のコラムでご紹介します。
壁面の液残りあり
壁面の液残りなし
成形精度のよいシリンジとピストンを選定することは最終的には「安定した吐出」の実現に繋がります。シリンジ内壁に対してピストンが常に安定した密着で、一定のカキトリ摩擦のまま下方に移動していくことで、吐出圧力による塗布量の不安定さは解消されます。シリンジ残量による要素などを除けば安定した吐出が実現します。

シリンジに対して専用のピストンがありますが、ピストンも緩い物からきつい物までラインナップされていることがあります。これは液剤毎に粘度や弾性など違いがあり、それに細かく対応するためメーカーが寸法違いや形状違いのピストンを準備しているのです。液剤によって最適な物を選定して安定吐出が出来るようにすることも重要です。
サンエイテックでも数種類のピストンからご選定いただけるよう準備をしています。
シリンジとピストンが使い始めから終わりまで一貫して“絶妙な密着性”を保っていれば、前述の①~②の問題は発生せず、安定した吐出が可能になります。
また、ピストンによってしっかりと密閉されたシリンジは優れた液剤保存容器にもなります。液剤が外気に触れないため液剤の物性が変化しにくく、冷凍保存にも有効で、安定した状態で保存できます。シリンジ専用のキャップもありますのでそちらを併用するとより効果的です。
高粘度の液剤をシリンジで安定して塗布するためには、最適なシリンジとピストンの選定が不可欠だということがご理解いただけたと思います。
シリンジは、液剤を貯めておく容器ですが、液ダレや液残りを防ぎながら安定吐出をするためには大変重要な役割を担っています。安定した吐出をするためには内径形状がストレートで安定したものを選択することが重要です。また、そのシリンジに専用で作られたピストンを液剤に合わせて選定することもとても大切です。
たかが容器と蓋ですが、液剤を安定的に無駄なく塗布するための秘密が詰まったシステムになります。
サンエイテックではお客様のお悩みを解決するために様々なラインナップのシリンジとピストンを準備しています。お気軽にご相談ください。