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ディスペンサー技術ガイド

高粘度コーティング材料の安定塗布を実現するには

~圧送・ギャップ・走行条件から考える塗布制御のポイント

防湿コーティング工程では、材料の高機能化や無溶剤化への対応に伴い、高粘度材料を使用するケースが増えています。一方、高粘度材料は流れにくい特性を持つため、「うまく広がらない」「塗布が不安定になる」「液だまりが発生する」といった課題が発生しやすくなります。

本記事では、高粘度コーティング材料で発生しやすい塗布課題を整理するとともに、安定した塗布品質を実現するための塗布課題、塗布制御とその考え方について解説します。

防湿コーティングイメージ図

高粘度材料における塗布課題

実際の現場では、「思ったように広がらない」「塗布が途中で切れる」「部品周辺に液だまりができる」といった現象に直面するケースも少なくありません。

高粘度材料は流動抵抗が大きく、液剤が自発的に広がって膜を均一化する挙動が期待しにくい特性を持ちます。その結果、面塗布工程においては以下のような不具合が発生しやすくなります。

  • 膜厚のばらつき(塗布ライン間の段差・凹凸の発生)
  • 塗布の途切れや不連続(供給不安定・流動不足に起因)
  • 部品周辺での滞留(流動不足による局所堆積)
  • 気泡の残留(混入した空気が抜けにくい)

これらの課題は、粘度だけでなく、材料特性や塗布条件の組み合わせによって発生する場合があります。特に、条件によって流れやすさが変化する材料では、吐出時と塗布後で挙動が大きく異なり、安定した膜形成が難しくなるケースが見られます。

また、塗布後の広がりに依存できないため、塗布時点での液膜形成精度がそのまま最終品質に反映されやすいという特徴があります。

電子部品の充填工程イメージ

高粘度材料による塗布良好と塗布不良例

高粘度材料における塗布制御の考え方

高粘度材料では、「塗布時点でいかに安定した液膜を形成するか」が重要な設計ポイントとなります。低粘度材料のように塗布後の自然な広がりによる均一化が期待しにくいため、吐出直後の膜形状を安定して形成することが求められます。

そのため、高粘度材料を安定して塗布するためには、単に吐出するだけではなく、液剤の流動特性や塗布条件を踏まえたプロセス設計が必要となります。

特に、以下のような要素は塗布品質へ大きく影響します。

① 吐出安定性の確保(圧送制御)

高粘度材料では流動抵抗が大きく、供給圧力の変動がそのまま吐出量のばらつきにつながります。単に圧力を上げるのではなく、タンク・配管・バルブを含めた圧送系全体の安定化が重要となります。

高粘度剤の圧送では、液送配管の抵抗が吐出安定性に大きく影響します。配管抵抗は配管長さに比例し、配管内径の4乗に反比例するため、配管を短くすること、または太くすることが有効です。例えば、配管長さを半分にすると配管抵抗は約50%低減します。一方、配管内径を1.5倍にすると、配管抵抗は約80%低減し、元の約1/5まで下がります。さらに、配管を短くし、かつ太くすることで、抵抗は約1/10まで低減できる場合があります。これにより、吐出部へ安定した圧力を伝えやすくなり、高粘度剤の圧送不安定、吐出量のばらつき、応答遅れの抑制につながります。

また、タンクも高圧をかけることで気泡が液剤に浸み込む現象が発生するため不安定要素になります。その場合は、上記配管を見直して圧力を下げるか、落し蓋を落としてエアーと液の接触を防ぎます。バルブヘッドにおいても高粘度液剤に適したバルブの選定が必要になります。低粘度向けを無理して使用することで圧力の高まりに繋がったり、液だれの原因にもなります。

吐出安定性の確保(圧送制御)
吐出安定性の確保イメージ1 吐出安定性の確保イメージ2

② 初期膜形成の精度設計(ノズル・ギャップ)

高粘度材料は塗布後に大きく広がらないため、吐出直後の液膜形状がそのまま最終品質へ影響します。ノズル幅・吐出形状・基板とのギャップは、単なる条件設定ではなく、膜形成を左右する重要な設計要素となります。 ニードル型ノズルによる接触・近接塗布では、一般的に塗布ギャップはノズル外径Dに対して約0.5Dを初期設定の目安とします。
例えば、ノズル外径がφ0.6 mmの場合、塗布ギャップは約0.3 mmが基準となります。

塗布ギャップが高すぎる場合、液剤が基板へ安定して転写されず、線幅のばらつきや途切れが発生しやすくなります。特に高粘度材料では、塗布ギャップがノズル外径D以上になると、液剤の追従性が低下し、断続的な塗布不良につながる場合があります。 一方、ギャップが低すぎる場合は、ノズル先端が液剤中へ過度に入り込み、液剤を押し広げることで、膜幅の拡大、エッジ形状の乱れ、基板接触リスクが発生します。

低粘度材料では液剤の濡れ広がりや流動性により、比較的広いギャップ範囲でも塗布が成立しやすく、条件によってはノズル外径Dの1.0〜1.5倍程度のギャップでも塗布可能な場合があります。
しかし、高粘度材料では許容範囲が狭く、0.5D前後を基準に、D以下で管理することが望ましいといえます。


塗布ギャップ設定の目安
液剤特性 推奨ギャップ 主な状態・注意点
高粘度材料 約0.5D 膜幅・膜厚が安定しやすい
高粘度材料 D以上 途切れ、かすれが発生しやすい
高粘度材料 0.5D未満 膜幅拡大、液剤押し広げに注意
低粘度材料 1.0〜1.5D程度 比較的広いギャップでも塗布可能

※D=ノズル外径

また、装置上では同じZ高さに設定していても、基板の反り、ワーク厚みばらつき、治具精度、ステージ平面度などにより、実際の塗布ギャップが変動する場合があります。
このような場合には、レーザーハイトセンサーなどで基板高さを測定し、Z軸補正を行うことで、塗布ギャップを一定に保ち、安定した膜形成が可能になります。

一方、JET、スプレー、フィルムコートなどの非接触塗布方式では、ノズル先端と基板を近接させる必要が少なく、一般的に数mm~20 mm程度の距離から塗布できるため、基板反りや段差の影響を受けにくいという利点があります。

特に、ワーク高さのばらつきが大きい工程や、ノズル接触を避けたい製品では、非接触塗布方式を採用することで、塗布安定性と工程許容度を高めることができます。

塗布ギャップイメージ図

③ 走行条件と吐出同期による塗布安定化

高粘度材料では、走行条件と吐出条件の同期が塗布品質に大きく影響します。特に以下のような条件は、膜形成品質へ影響します。


  • ・走行速度
  • ・加速度·減速度
  • ・塗布開始/終了時の動作
  • ・吐出量と走行速度の同期性

例えば、走行速度が遅すぎる場合、単位面積あたりの塗布量が増加し、液だまりや膜厚ムラが発生しやすくなります。一方、速度が速すぎる場合には、液剤供給が追従できず、かすれや線切れにつながる場合があります。

また、高粘度材料では、塗布開始直後や停止直前に液剤挙動が不安定になりやすく、始点·終点での盛り上がりや液だまりが発生するケースも見られます。加減速制御や吐出タイミングの最適化によって、走行と吐出を同期させることが重要です。

高粘度材料では、「どのように吐出するか」だけでなく、「どのように動かしながら塗布するか」が、塗布品質を左右する重要な要素となります。

高粘度材料の安定塗布イメージ図

高粘度材料における適用条件とプロセス設計

例えば、高粘度UVコーティング材の基板塗布工程では、以下のような複合制御が行われるケースがあります。

  • 加圧タンク圧力の安定化
  • 配管径·配管長の最適化
  • 高粘度対応バルブの選定
  • ノズルギャップの一定化
  • レーザーセンサーによる高さ補正
  • 走行速度と吐出量の同期制御
  • 加減速時の吐出タイミング補正

これらを組み合わせることで、膜厚ばらつき、液だまり、塗布切れ、外観不良などを抑制し、安定した塗布品質につなげることが可能になります。

高粘度材料における塗布安定化には、材料特性に適した塗布装置·バルブ選定も重要となります。高粘度材料では飛散抑制、塗布幅安定、吐出応答性などが課題となるため、液剤特性に適した塗布方式を選択する必要があります。

高粘度材料に対応した塗布ソリューション

このような高粘度材料の塗布課題に対して、当社のスプレーコーティングバルブ「SV01CS」は、最大10,000mPa·sの高粘度材料に対応しながら、飛散を抑えた安定した塗布制御を実現可能です。UV材・シリコーン・エポキシなどの機能性材料にも対応可能であり、高粘度材料における塗布品質安定化に貢献します。本記事で紹介した「圧送安定化」「非接触塗布」「塗布条件最適化」の考え方を実現する手段の一つとして有効です。

電子基板の防湿・絶縁保護を目的としたコンフォーマルコーティングでは、無溶剤型材料など、中~高粘度のコーティング材が使用される場合があります。これらの高粘度材料を均一に塗布するためには、液剤の飛散や塗布ムラを抑えられるバルブと、液剤特性に応じた塗布条件の選定が重要です。

また、非接触塗布でありながら高い制御性を持つため、塗布範囲や外観品質の安定化が求められる工程にも適しています。

SV01CS塗布イメージ1
SV01CS塗布イメージ2
基板コーティング用バルブ SV01CS

高粘度材料の飛散を抑えて制御可能

基板コーティング用バルブ SV01CS

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まとめ

高粘度コーティング材料では、材料が広がりにくいため、塗布時の条件や制御方法によって塗布品質が大きく左右されます。安定した塗布を実現するためには、単に材料を吐出するだけではなく、材料特性に応じた吐出制御・塗布条件・プロセス設計を総合的に最適化することが重要となります。

電子部品の高密度化や高機能材料の採用拡大に伴い、高粘度材料への安定塗布ニーズはさらに高まっています。本記事が、高粘度材料における塗布プロセス改善や装置選定の参考になれば幸いです。