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ディスペンサー技術ガイド

一液性エポキシ樹脂の粘度はなぜ変わる? 温度変化がディスペンス塗布に与える影響と対策

シリーズ:一液性エポキシ樹脂の粘度変動

電子部品の接着や封止工程では、一液性エポキシ樹脂が広く使用されています。しかし、生産ラインで は「同じ条件で塗布しているのに塗布量が変わる」「時間の経過とともに塗布幅が変化する」といった 現象が発生することがあります。

その原因の一つが、エポキシ樹脂の粘度変動です。

特に温度変化は材料粘度に大きく影響し、ディスペンス塗布の安定性に影響を与える要因となります。 本記事では、一液性エポキシ樹脂の基本特性と塗布工程の特徴を整理したうえで、温度変化による粘度変動が塗布工程に与える影響とその対策について解説します。

一液性エポキシ樹脂(1液エポキシ)

一液性エポキシ樹脂は、硬化剤があらかじめ混入された単一成分型のエポキシ樹脂であり、使用時に混合工程を必要としないため、電子部品接着や封止工程などで広く使用されています。混合工程が不要であることから、量産工程において扱いやすく、安定した品質管理が可能な接着材料として採用されています。


一液性エポキシ樹脂イメージ図
項目 内容
成分 単一成分
硬化方法 熱硬化(主流)
粘度 数百~数万 mPa・s
保存 冷蔵保存が多い

塗布工程での特徴

一液性エポキシ樹脂は、塗布工程において以下のような特徴を持っています。

  • 高い接着強度を持つため、電子部品接着用途で広く使用される
  • 微小接着用途が多く、微量塗布が求められるケースが多い
  • 高粘度材料が多く、流動性に特徴がある

そのため、ディスペンス工程では微量塗布や高精度塗布が求められるケースが多くなります。

生産現場でよく見られる現象

一液性エポキシ樹脂は、電子部品搭載や封止工程などで広く使用されています。
しかし、生産現場では粘度変動による塗布幅のばらつきが課題となる場合があります。
例えば、生産ラインでは


  • ・立ち上げ時は問題なく塗布できる
  • ・生産の進行に伴い、塗布幅が徐々に変化する

同じ圧力設定、同じ吐出時間であっても、塗布幅が大きくなったり、小さくなったりするケースがあります。

一液性エポキシ樹脂塗布イメージ図

なぜこの現象が起こるのか

一液性エポキシ樹脂の塗布量が変動する主な要因として、以下の2つが挙げられます。


  • ・温度変化による粘度変動
  • ・使用時間の経過による粘度変動

実際の生産現場では、このような粘度変動によって塗布条件の調整が必要になるケースが少なくありません。その中でも、比較的発生しやすく塗布工程へ影響を与える要因の一つが温度変化による粘度変動です。

ここからは、温度変化が一液性エポキシ樹脂の粘度にどのような影響を与えるのか、またディスペンス塗布にどのような課題が発生するのかについて詳しく見ていきます。

一液性エポキシ樹脂が温度変化による粘度変動

なぜ温度によって粘度が変化するのか

エポキシ樹脂の粘度は、分子同士の相互作用と分子運動に依存します。

温度が低下すると分子の運動エネルギーが減少し、分子間の引力(ファンデルワールス力など)が相対的に強くなるため、流動しにくくなり、粘度は上昇します。
一方、温度が上昇すると分子運動が活発になり、分子間の結合が緩むことで流動性が向上し、粘度は低下します。
ディスペンス工程では同一条件(圧力・時間)で吐出を行うため、粘度変化はそのまま吐出量の変動につながります。その結果、生産環境の温度変化や装置稼働による材料温度の変動により、塗布量のばらつきや品質不安定の要因となります。

温度低下と粘度の関連図
温度上昇と粘度の関連図

生産現場で発生する課題

粘度が変化すると、ディスペンサーによる塗布工程では次のような課題が発生する場合があります。


  • ・塗布幅のばらつき
  • ・吐出量の変動
  • ・塗布形状の不安定化
一液性エポキシ樹脂イメージ図

対策:温調システムの導入による粘度安定化

エポキシ樹脂の粘度は温度の影響を受けやすいため、材料温度を一定に保つ温調システムの導入が有効な対策となります。
温調を行うことで液剤温度の変動を抑え、粘度を安定させることができるため、ディスペンサーによる吐出量や塗布形状のばらつきを低減し、安定した塗布品質を維持することが可能になります。

ディスペンサー工程では、主に次のような温調方式が使用されます。

1. ヒーター式温調(加熱制御) ―接着剤塗布の粘度安定に有効

カートリッジヒーターを用いて材料シリンジや材料タンク、ノズル周辺を加熱することで、材料温度を 一定に保つ方式です。構成が比較的シンプルで導入しやすく、エポキシ樹脂や接着剤ディスペンス工程において広く使用されています。

温度コントローラー STC-200

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2. ペルチェ式温調(加熱+冷却) ±0.1℃精密シリンジ温調に最適

ペルチェ素子を利用した温調方式では、加熱だけでなく冷却制御も可能です。
周囲温度の変化や装置内部の発熱によって材料温度が上昇した場合でも、冷却による補正を行うことで設定温度に安定して維持することができます。
そのため、より高い温度制御精度が求められる微量塗布工程や、長時間連続運転を行う生産ラインにおいて有効です。

ペルチェ式シリンジ温調システム

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3. ノズル部ヒーターによる温度安定化

ジェットディスペンサーなどの装置では、ノズル周辺にヒーターを設置して温度を安定させる方法があります。

ディスペンス塗布では、材料がノズル先端付近で温度の影響を受けやすく、周囲環境や装置稼働によっ て温度が変化すると粘度が変動し、吐出状態が不安定になる場合があります。そのため、ノズル部にヒーターを設置して温度を一定に保つことで、ノズル付近の材料粘度を安定させることができます。

特にジェットディスペンサーでは、ノズル部の温度管理を行うことで、吐出の安定性や塗布再現性の向上が期待できます。

ピエゾジェットディスペンサーEXJET

ピエゾJETディスペンサー EXJET

ノズル周辺にヒーターを設置 製品詳細はこちら

4. 液剤タンクのヒーターによる材料温度管理

もう一つの方法として、液剤容器(材料タンク)自体を加熱して材料温度を一定に保つ方法があります。 材料タンクを温調することで、液剤全体の温度変化を抑えることができ、塗布工程全体の粘度安定につながります。特に高粘度材料や温度の影響を受けやすい接着剤では、タンク温調によって材料状態を安定させることが有効です。

当社では、用途や設備に応じて使用できる2種類のタンクヒーターを用意しています。


シリコンラバーヒーター

シリコンラバーヒーター画像

シリコンゴム素材で構成されたヒーターで、液剤容器の外側に巻き付けて使用します。 柔軟性があり着脱も容易なため、作業性に優れており、比較的手軽に温調を行うことができます。

マントルラバーヒーター

マントルラバーヒーター画像

発熱部が厚い断熱材で覆われた構造になっており、熱効率に優れた温調が可能です。 液剤容器全体を均一に加熱することができるため、より安定した材料温度管理が求められる工程に適しています。

このように、一液性エポキシ樹脂の塗布工程では、温度変化による粘度変動を適切に管理することで、 吐出量や塗布形状のばらつきを低減し、安定した塗布品質を維持することが可能になります。

一方で、一液性エポキシ樹脂の塗布量が変動する要因は温度変化だけではありません。 もう一つの大きな要因として、使用時間の経過による粘度変動があります。

材料は使用を続けるうちに状態が徐々に変化し、それが吐出量や塗布状態に影響を与える場合があります。この「使用時間の経過による粘度変動」と塗布工程への影響については、次回の記事で詳しく解説します。